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カルラのリスト

監督:マルセル・シュプバッハ

キャスト:カルラ・デル・ポンテ

Blogparts02_3 『戦争犯罪人(戦犯)』とゆう言葉はあまり好きではない。戦勝国が敗戦国に対して戦争犯罪人のレッテルを貼り、国際法廷でその罪を問うが、戦争とは必ずしも戦勝国に正義があるとは限らないからだ。

しかし、ボスニア・ヘルツェコビナ紛争で、大量虐殺の主導的立場にあった、ミロシュビッチ(2006年死亡)やカラジッチ、ムラディッチらの指導者達は国際法廷の場で裁かれるのは当然であろう。

本作『カルラのリスト』は、逃亡中の戦争犯罪人を逮捕/起訴すべく奔走している、旧ユーゴ国際刑事法廷(ICTY)の国際検察官/カルラ・デル・ポンテと彼女のスタッフたちの戦いの記録(ドキュメンタリー)である。

国際刑事法廷の名前は耳にする機会はあったが、実際にどのような活動をしているのかは、一般のメディアでは窺い知る事は難しい。本作品を観る事で多少なりとも垣間見る事が出来た。また、国際社会の裏側も見れた。

Blogparts01 カルラ・デル・ポンテは常に数十人のSPに守られながら行動をする。彼女が追っている戦争犯罪人は、他方から見れば、自国の”元大統領”であり”英雄”である人物なので、そのシンパから命を狙われる可能性も十分にあるのだろう。

そんな危険は状態にありながら、彼女を突き動かす物とは何なのだろう。”スレブレニツァの虐殺”では多くの女性が犠牲になった『民族浄化』なる事件が起こっている。同じ女性として犠牲者の悲痛な叫びを聴き、それがカルラの魂を揺さぶるのではないかと思う。

『犠牲者の母の会』の女性が冒頭、「検察官がカルラで良かった」と言っている裏には、「もし、男性の検察官であったならば、適当な所で政治決着に持ち込まれるのではないか」との不信感の表れではないでしょうか。

その思いを感じるからこそ、カルラは現状を苦々しく思っているのでしょう。

ICTYは国際機関であるが、戦争犯罪人の逮捕/起訴する権利が無く、各国政府の協力に支えられている。戦争犯罪人がセルビア国内に潜伏/匿われているのを知りながら、現セルビア政府は逮捕するのは及び腰。”英雄”を逮捕/起訴する事によって国内情勢が不安定になるのを恐れているのであろう。

カルラへのインタビューを聴いていると、端々には苛立ちや無力感が感じられるのはその為であろう。

Blogparts03

クロアチアに潜伏している戦争犯罪人を逮捕する場面では、国際社会の裏事情が垣間見えた。

ICTYに対して表向きは協力的な態度を取るクロアチアではあるが、裏では非協力。しかしEUに加盟したいクロアチアにとっては、ICTYの評価は大切な判断基準になる。

カルラは逮捕に協力しなければEUに対して批判的な評価をすると、クロアチア政府に脅しを掛ける。裏取引があったとも言われるが、結果として一人の戦争犯罪人をオランダ/ハーグの国際法廷に送り込む事に成功した。

しかし、カルラには時間が無い。カルラの任期は2007年9月14日(12月末まで延期された)。未だに6人の戦争犯罪人が逃亡中であるが、アフガン、イラク戦争に忙しいアメリカやNATOは、この歴史の記憶から忘れ去られようとしている紛争には興味が無いようだ。

世界中で紛争/戦争は絶え間なく続く。メディアの報道は常に現在進行形の戦争を伝える。10数年前の戦争など、新鮮はニュース・ソースでは無いので報道される機会も徐々に減ってしまい、我々の記憶からも消えてしまうだろう。

しかし、過去の戦争の記憶に苦しんでいる人たちも沢山居る。その人たちを救わなければ、”憎しみの連鎖”は何時までも続き、戦争も終わることは無いのだろう。

映画生活(http://www.eigaseikatu.com/title/19392/)

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カルラのリスト(2006 スイス) 原題   LA LISTE DE CARLA   監督   マルセル・シュプバッハ       撮影   デニス・ユッツラー 出演   カルラ・デル・ポンテ      (ドキュメンタリー映画) スロベニア、クロアチアの独立をきっかけに旧ユーゴ紛争が勃発した1991年以後、旧ユーゴスラヴィアでは民族浄化の名による大虐殺や集団レイプなどの深刻な人権侵害が起こりました。中でも1995年にセルビア人勢力がボスニア東部のスレブレニ... [続きを読む]

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