フォト・リテラシー(報道写真を読む倫理)

41wtpgelcdl_sl500_aa240_ 今橋映子著

以前「DAYS JAPAN」誌の編集人/広河隆一氏の講演で、この「フォト・リテラシー」の話題になったのを思い出した。

「写真を読み解く能力」とでも訳すのか、一枚の写真からその背景を読み解く事を言っている。

写真の世界(特に報道写真の分野)では「決定的瞬間」が”魔法の言葉”のように使われる。

人の人生を左右する一枚の写真。

世界を動かす一枚の写真。そんな写真であるが、その真偽については色々と言われている。本書を読むと、現代に知られた「決定的瞬間」の写真にも可也の部分で演出が成されていた事にきずく。しかし初期の報道写真には演出を含めた上での作品が多々ある事にもきずかされる。

カメラの歴史において、現代ほど写真が身近に感じる時代は無いだろう。なにせ私もデジタル一眼レフを所有し、気軽に写真撮影を楽しんでいる。

それこそ携帯電話を持っている人は、基本的にはカメラを毎日持ち歩いてる事と同じだ。「決定的瞬間」は何もプロのフォトグラファーだけが所有する魔法では無くなった。

イラク戦争での最も象徴的な写真にも数えられる「アブグレイブ刑務所での捕虜虐待」写真は、一兵士が撮影したものだし、秋葉原での惨劇も多くが一般の人達の撮影写真である。今後の世界では、街角に設置された無人の監視カメラが「決定的瞬間」を収める事になるかもしれない。

撮影者に意思や思い入れが少ない写真が新聞の一面を飾るようになると、なお更「フォト・リテラシー」の必要性が出てくるだろう。写真の背景を観察し読み取れないと、情報発信者(マスコミ)に我々の意識がコントロールされてしまう危険性が出てくる事も考えられる。

カラシニコフ

510abe7ajql_sl500_aa240__3世界の人口:66億人
世界中に溢れるカラシニコフ自動小銃(AK47):1億丁。

AK47の世界的なヒットには、幾つか要因がある。

一つは東西冷戦の終結。
ニコラス・ケイジ主演の映画「ロード・オブ・ウォー」でも描かれていたように、東西冷戦の終結によって経済が困窮した東欧諸国は軍部に対する国家予算が削られ、軍人への給与の遅配が続く。
箍の緩んだ軍人は、武器弾薬を手当たりしだい安値で売り払った。

もう一つのルートは、金正日帝国のような不正に武器を輸出する国。
そのような国は売却先を厭わない。

ダイヤモンドや原油で巨万の富を築いた独裁国家は、その利益を国民の為に農地改革やインフラ整備に予算を割かず、武器の購入やテロリスト支援、周辺国や敵対国の反政府ゲリラ支援に充てる。

構造が簡単なカラシニコフ銃は、子供でも1~2週間で解体整備から実際の使用までに至る。
その為、少年兵を多数要する各国の反政府ゲリラには大変重宝される。
こうしてカラシニコフ銃が拡散して行く。

国民生活の安定に関心を示さない国家を『失敗国家』と評している。
失敗国家誕生の裏にも銃が暗躍する。

紛争や内乱の終結後に武装解除に失敗した国や地域は、失敗国家への道を突き進む。

では、銃の無い社会は実現可能なのだろうか?

内戦終結後の紛争地では、対立する勢力(宗派)間には相互不信が根強い。
一方の勢力が完全に武装解除しない限り、もう一方の勢力も武器を手放さないだろう。

より強力な勢力(政府)が治安の維持を約束すれば可能なのか?

警察権力が治安を維持するアメリカ合衆国でも、銃犯罪は後を絶たない。
広大な土地を擁する場合、隣家や警察とも離れており自分の身は自分で守らなければ成らないという論理も存在する。
しかし、銃犯罪の発生率では都市部の方が多いだろう。
銃規制法案が成立する一方で、全米ライフル協会のように銃手放さない人たちもいる。

アメリカの建国の歴史は銃によって築かれた。新大陸の発見から侵略が始まり、南北戦争の内戦を経てきた歴史的背景から失敗国家ではないかとも思える。

日本はどうだ。
銃犯罪の少なかった日本ではあるが、近年はそうでもない。
暴力団同士の抗争以外にも、銃が使われるケースも多発している感じがする。
相手より優位性を保つ為、己の欲望を満たす為に銃把を握る。

結局は誰か一人が銃を持っていれば、それに対抗する手段としてより強力な銃が必要となる。

治安を維持するのは銃ではない。解っているが抜け出す事の出来ないスパイラルのようだ。

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 Ⅰ

イエス・キリストの復活には、ユダヤ人が”約束の地”に帰還する事が必要。

そんな話を以前聴いた事があった。キリスト教右派の教徒にもそんな話を信じる人たちもいるらしい。まさかそんな”おとぎ話”とも”神話”とも取れない話を基にアメリカの中東政策が決定され、イラク戦争が始まった等とは考えたくもない。

しかし、本書『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ』を読んでみると、”まさか!”と思いたくなる。イスラエル・ロビーとは、日本における”族議員”的な存在かと思いきや、もっとアメリカの国政、特に外交政策に強い影響力を持っているようだ。イスラエルの為ならばアメリカ本国に対してマイナスな事でも影響力を行使する。

イラク戦争開戦は、石油利権の確保のみならず中東におけるイスラエルの安全保障的な意味合いがあるのではないかと思っていたが、アメリカの中東戦略は、中東一国支配を嫌っている向きがある。イラクやイランが軍事力を背景に資源(石油)を独占し国際経済を左右されるのが嫌なのだろ。それならば、何故イスラエルに対してだけ必要に支援をするのかが不自然で為らない。しかしそこには、イスラエル・ロビーと選挙の関係があるようだ。

アメリカの選挙は非常に資金が必要となり、大統領選挙ではの資金力が指名候補獲得の鍵となる。その資金源となるのがイスラエル・ロビーの各種団体や個人のようだ。

イスラエルに対する友好的な発言、政策を掲げる候補に対する資金提供のみならず、相手候補者に対するネガティブな攻撃をも行なう。現在行なわれているアメリカ大統領選挙の民主党指名候補者選で苦戦をしている、ヒラリー・クリントンは、夫のビル・クリントン元大統領がイスラエルとパレスチナの歴史的な和解を演出した時、アラファト議長婦人と抱擁したシーンがイスラエル・ロビーの反感を買ったらしい。

イラク開戦当時、次期大統領選を視野に入れ始めたのかは解らないが、民主党議員でありながらイラク戦争開戦を支持し、未だにその行動を撤回する事は無い。

バラク・オバマの攻勢が続いているが、テキサスや南部と言ったキリスト教右派の支持層が強い大票田が残っているだけに、民主党候補者選は最後まで縺れそうだ。

ユダヤ人は、”ホロコースト”とゆう悲惨な過去を経験してきた。イスラエル・ロビーはその過去を巧みに利用し非難をかわしている。”反ユダヤ主義”(ユダヤ人を排除するような考え方)は”悪”との構図を作りだしているようにも思える。

確かにユダヤ人の過去は悲劇ではあるが、現在の中東の状況はどうだろう。

イスラエル/パレスチナの関係を見た場合、どちらが”ひ弱い子羊”なのかは容易に察しがつく。分離壁の建設や、レバノンに対する攻撃など国際的にも非難されている政策をとってきたイスラエルを支援する事はアメリカにとっても非常にマイナスなのではないかと思える。

それでも支援を続ける。確か現アメリカ大統領もキリスト教右派だった。

ロシンアン・ダイアリー/暗殺された女性記者の取材手帳

ロシア人ジャーナリスト/アンナ・ポリトコフスカヤが凶弾に倒れたのは、2006年10月7日。未だに容疑者の特定も出来ていないジャーナリスト暗殺事件であるが、本書を読み続ければその黒幕の姿が浮かび上がってきそうだ。

チェチェン共和国の独立紛争に興味を示しだした頃にアンナ・ポリトコフスカヤの存在を知る事となった。報道される情報の少ない中でアンナは貴重な情報発信源であった。

世界でも有数な過酷な紛争地帯。当初紛争の原因は反政府組織による民族独立紛争の構図を思い描いていたが。アンナがレポートする状況はそれだけでは無い問題の奥深さがあった。親ロシアよりの政府の私兵と反政府を掲げる独立派。双方の境界があいまいになりながら市民生活を襲っていた。

汚職が蔓延り、略奪、暴行、虐殺、レイプがチェチェンには氾濫していた。

プーチン政権の強力な圧力によってチェチェン関連の報道は限られていた。またジャーナリストでさえ命の保障は無く、身代金目的の誘拐の標的になっている。そんな危険な土地にアンナは年間数十回も潜入して報道し続けた。

2007年9月にミャンマー(ビルマ)で凶弾に倒れた、長井健司さん=当時(50)をはじめ昨年(2007年)に取材中に殺害されたり、テロ等に巻き込まれて死亡したジャーナリストは65人の上るそうだ(ニューヨークに本部を置く民間団体「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)より)。彼らの存在が我々に情報を提供してくれる。紛争地からの報道が途絶えたら、いったいそこでは何が横行するのだろう。微力かも知れないが報道には紛争/戦争を止める力があると信じる。ベトナム戦争も現地ベトナムでの米軍の横行やアメリカ軍の多数の犠牲者の報道が「アメリカの撤退」に繋がった。

アンナを失った今、チェチェンの今後が心配される。我々の知らないうちにチェチェン共和国の名が世界地図から消える日がくるかも知れない。

今年(2008年)は、ロシア大統領選挙が行なわれる。三選の出来ないプーチン大統領は、後継者にドミトリー・メドベージェフ第1副首相を指名し、自身は首相に就任する用意があるとの発言からも、”院政”を敷く準備に余念が無い。

アンナ・ポリトコフスカヤなら、どんな言葉で記すだろうか。

ウルトラ・ダラー

著者「手嶋龍一」のみがフィクションと言っているだけのノン・フィクション小説。

北朝鮮による国家的犯罪の日本人拉致事件の隠された目的は、偽100ドル札「ウルトラ・ダラー」製造のため・・・

著者の記者時代に入手した”インテリジェンス”を不断に盛り込んだ作品で、緊張感溢れる場面が数々描かれている。

突如来日したパン・シオンこと金正日(キム・ジョンイル)氏の長男金正男(キム・ジョンナム)氏。彼の拘束から、外務、法務、警察の担当者会議の経緯。そして釈放、中国・北京への送迎までの一連の話は非常に興味深い。金正男程の人物が動くにはそれなりの理由があり、報道されいる「家族でディズニーランドに行くのが目的」では到底無いであろう事も示唆している。

また、最近(2006/06/16)では、北朝鮮の金正日総書記の有力な後継者として急浮上している次男金正哲(キム・ジョンチョル)氏がドイツでエリック・クラプトンのコンサートを見に来たのもそれなりの”目的”があったのではないかと憶測する。

日本国内で偽500円硬貨大量に発見される事件などは、朝鮮半島に近い沿岸地域で発生する事が多いと感じるのも意外では無いのかも知れない。偽硬貨を大量に製造するにはそれなりの機械や技術が無ければ出来ないことを考えれば、素人に容易に出来る事では無い。

アメリカが北朝鮮の資金洗浄(マネーロンダリング)に絡んで、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジアに金融制裁を発動したり、米誌ニューズウィークが、アメリカが国家ぐるみで米ドル札を偽造している疑いが濃厚としている北朝鮮への金融制裁を特集した記事で、米国の取り締まりの「真の標的は平壌(北朝鮮)ではなく北京(中国)」とする専門家の見解を伝えたりと小説の中の世界が次々と現実になっている感がする(「ウルトラ・ダラー」でも中国の影を示唆している)

北朝鮮が「テポドン2号」の発射をチラつかせながら、アメリカに二国間協議を迫った(2006/06/21)ところを見ると、マカオの銀行を抑えられたのが相当に苦しいのではないかと感じる。なにせ現金が手に入らなければ、ミサイル発射の燃料すら購入出来ない。北朝鮮のウォンでは国際社会は何も売ってはくれないだろう。今回のミサイル発射騒動が形だけに終わったら、相当に北朝鮮のエネルギー事情が切迫しているとも考えられるのではないか。

北朝鮮の貿易の軸が中国、韓国に移ってしまった今、日本が経済制裁に踏み切ってもさほどの影響も無いのではと感じる。日本からの物資がストップしてもその分、中国、韓国が補ってくれるだろう。国境が接している中国・韓国にしてみれば数千、数万単位の難民が国境を超えるほど恐ろしい事は無いと思う。そのため、北朝鮮国民が飢え死にしない程度に援助をするはずだ。

核を追う テロと闇市場に揺れる世界

この本の元になったのは、朝日新聞が掲載した「核を追う」シリーズである(本書 あとがき より)

1987年に米・ソ間で調印された「中距離核戦力(INF)全廃条約」により、ようやく核軍縮に向かうかに思えた世界。21世紀に入った世界は再び核への依存に向かっている。

インド、パキスタンによる核実験の成功。パキスタン・カーン博士の闇ネットワークの存在。イランによるウラン濃縮開始宣言。そしてアメリカの核による先制攻撃も辞さないと明言したブッシュ・ドクトリン。

特に日本を取り巻く状況は、北朝鮮の核開発(保有)宣言によって大きく動き始めた感じがする。日本は唯一の被爆国として世界に核軍縮を訴えてきたが、それと同時に、アメリカの「核の傘」による核抑止力にも依存している。

世界には核兵器を持つ事が許されている国(米英仏ロ中、インド、パキスタン、潜在的核保有国のイスラエル)と、それ以外の核兵器を持つ事が許されていない国に分かれている。これは明らかに不平等である。核兵器によるパワーバランスを考えれば、イランや北朝鮮が核抑止力を欲するのも解らなくない。

過去の日本にも核武装に傾いた歴代総理が2人いたそうだ(池田勇人と佐藤栄作)驚くと同時に納得も出来る。資源の少ない日本は核武装して大国と対等に渡り合わなくては生きてはいけないと考えても不思議ではない。ただし被爆国の日本国民は核武装に対する拒否反応が激しく、それを理解している内閣も決して核武装に走る事は無かった。

果たして現在もそうだろうか?

北朝鮮が核武装したら、今の日本国民は核武装に拒否反応を示すだろうか?

小泉内閣の誕生により日本はかなり右翼化傾向が出てきている感じがする。国際強調よりも単独行動主義のアメリカを支持してきた。自国の利益を最優先しても構わないとした内閣を国民は支持してきている。安部さんもその傾向が強いと感じるがかなりの人気者のようだ。

もし今自国防衛を唱える政治家が出てきたら、核武装を唱える政治家が出てきたらそれに同調する国民がいないとは言い切れないような感じもする。

世界(特にアジア各国)が懸念するほどの余剰プロトニウムの保有国でもある日本は、核武装しようと思えば数年後には核保有宣言しているだろう。

核保有するメリットとは何だろう。

唯一、相手(北朝鮮や中国)から核攻撃を受けないぐらいだろう。だからと言って北朝鮮や中国と関係が友好になるとは思えない。一段と対立が激しくなるだけだろう。現にインド/パキスタンは両国が核保有してからも、通常兵器での戦闘が断続的に続いている。

以前の世界は、現在の核保有国以外が核保有(核拡散)する事を悪としてきた。しかし今は誰が核保有するかが問われている。極端な話、アメリカの同盟国であれば核保有しても構わないという事になりつつある。インドはアメリカとの経済的結びつきが強くなってきたので、核保有にアメリカはお墨付きをした。パキスタンもアフガニスタン攻撃/アルカイダ殲滅作戦の功績により核保有国の仲間入りを黙認されたも同然。

イランが核武装しても石油の供給国の地位があればアメリカは黙認しかねない。

他国の核保有をアメリカが左右するのも納得できないが、それが核保有している超大国の力でもあり、北朝鮮やイランが求めて止まないものでもあるのだろう。

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